令和5年ナラ枯被害軽減計画
令和5年のナラ枯対策は「マスアタック」防止に重点をおく
令和4年活動した中でカシナガ「マスアタック」の脅威を改めて痛感した一年だった。
そこでマスアタックについての対策を下記に纏めてみた。
❶ 枯死(ナラ枯)はカシナガのマスアタックをうけた樹木で発生する
マスアタックとは先に 穿孔 したカシナガの雄が集合フェロモンで同種他個体を誘引し、集
団で穿孔することで、その穿入木が樹液等で抵抗できなくする現象です
※ マスアタック前の防御が重要
防御はフェロモンを出す初期穿入カシナガ雄をブロックしてしまう対策で、ストレッチフ
ィルム又はポリチューブを樹に巻き付けて(立木ビニール被覆)カシナガ雄の穿孔を防ぐこ
とによりフェロモンを出させない対策で、この対策が最も安価で作業性も良く効果的である。
(資材被覆は神奈川県ナラ枯れ被害対策ガイドラインで推奨されています)。
※ 樹下部に対策を施せば上部に穿孔し難い
カシナガは初期に樹幹下部に集中して穿孔するものの、下部の穿孔密度が高くなってく
るに従い穿孔箇所は地樹の上部に移行する。
これらを効果的に防ぐには樹下部の初期 穿孔 を防ぐことにより、樹上部への移行も防げ
る事となります。この様にカシナガ穿入前のビニールシート被覆対策が如何に重要か分る。
❷ マスアタックにより樹辺材細胞が破壊される
ナラ枯を発生させる病原菌は雌のカシナガが幹内に持ち込み、樹の辺材部にカシナガの孔
道が密に形成されると菌糸は孔道を伝って広がり、菌糸は辺材道管の中から樹の生きている
柔細胞の中に侵入し、細胞から栄養を吸収することでその細胞は死に辺材は褐色に変色する。
辺材細胞変色部の樹液が上昇できなくなり急激に枯れる
辺材細胞の破壊は外見から見えるものでは無いが、マスアタックが激しければ細胞の破壊
も進行していると思わなければならないので、マスアタック前に❶のビニールシート被覆を
実施することが重要となる。
❸ マスアタックが発生する時期
図は座間市のカシナガ活動を調査した、週別の飛翔数グラフです。
マスアタックはカシナガの飛翔数に比例して発生することが分かった。
又、一旦マスアタックを受けた樹木は菌により樹の辺材細胞が破壊されている為に、燻蒸等に
より、樹内のカシナガを駆除したとしても枯死をを防ぐことは難しいのでマスアタックを受けな
い対策が重要となる。
① ストレッチフィルム又はシートを樹周りに巻き付ける作業は5月末迄に完了させ、カシナガ穿入をブロックする(県ナラ枯れガイドライン)。
② ナラ枯検知シートを該当樹に取付てカシナガを見える化してそれに応じた対策をとる(~8月)。
参考
1)カシナガ捕獲10頭以下の場合 ⇒ 要観察
2)カシナガ捕獲10頭以上の場合 ⇒ カシナガトラップ設置、若しくは下記⓷項を実施する。
③ 既に軽微なカシナガ穿入が確認された場合⇒ 粘着面を内側にしたシートを巻き付け、その上にストレッチフィルムを巻く(わら縄は不要)。
④ 既にマスアタックが確認された場合 ⇒ 手遅れの可能性もあるが、防虫燻蒸を実施する(枯死したとしても、内部のカシナガを駆除できる)。
①~②項を下記年間計画表で表す。
❹ 年間計画
ナラ枯を防ぐには下記年間計画によりタイミング良く計画実施することが重要となる。
① 予知 ナラ枯予知シートを用いてマスアタック樹木を知り、それに応じた対策を行う(写真 ナラ枯予知シート・・座間安全・安心推進会考案製作)。
☜ 写真1
※ナラ枯予知シートでカシナガの活動状態を知る。
※粘着シートも座間安全・安心推進会製作したもので強力粘着と安価、取り扱いが容易と言う特徴がある。
☜ 写真2
② 防御
ストレッチ1フィルム(μ20×500㎜×300ⅿ透明)、又はポリシート(0.1mm×300mm×200M)を未穿入木に巻き付け、カシナガが穿入できないように施す事を目的としている(立木ビニール被覆・・神奈川県ナラ枯れ被害対策ガイドラインに基ずく対策)。
※ 一般シート巻きは、どうしても隙間が出る。特に根部及び上部の密閉が難しく失敗することが多く、作業性、金額面でも劣る為にストレッチフィルム巻きを推奨します(取り外しも容易)。
※ 木ビニール被覆に重点をおくことにより、行き場を失ったカシナガにより、林のカシナガ密度が上昇するため未被覆の被害が増すことが考えられますが、カシナガトラップ、粘着シート設置によりカシナガ密度上昇を防げる。
☜ 写真3
⓷ 駆除
カシナガトラップは、廃ペットボトルを数珠状に編み、①の予知シートの結果、マスアタッカが予想される樹に設置することにより、カシナガを捕獲駆除する事を目的としている(座間安全・安心推進会製作)。
☜ 写真4
④ 駆除
根上樹、高齢樹等シートを巻き付けることが出来ない場合は、「カシナガトラップ」が最適です。
※ カシナガ活動前、又は初期にに設置することでナラ枯を防げる。
※ 樹齢が高く樹・根が複雑形状の場合に適する(ご神木等幹が太い場合4~5本設置する)。
☜ 写真5
⑤ 駆除 粘着シート巻きは、粘着面を表側に設置することで、カシナガを捉えて駆除することを目的とする(座間安全・安心推進会考案製作)。
⑥ 駆除
軽微の穿入木又は枯死木の場合は粘着面を樹側に巻き付けて樹内部のカシナガを飛翔前に駆除する(座間安全・安心推進会考案製作)。
写真は粘着面を表側にして、カシナガを捕獲することで、巻いた木のカシナガの侵入を防ぐと同時に周囲のナラ枯を防止することを目的とした。
☜ 写真
⑦ 駆除 防虫燻蒸はカシナガが幹内穿孔が確認された場合に採用する。幹に防虫剤を取付後に薬剤「スミパイン」を噴霧し、その後速やかにストレッチフィルムを巻き付け密閉することで、スミパインの気化ガス及び防虫剤の気化ガスが2㎜以下の細い孔奥深くに潜むカシナガを駆除することを目的とする。
しかし、マスアタックを受けた木々は既に樹内の水を吸い上げる道水管がナラ菌により損傷を受けていることが予想されるので、対策を行ったとしてもナラ枯を防げない場合もあるので、基本は5月末迄に②~④の防除を実施することが重要となる(座間安全・安心推進会考案製作)。
以上
この情報は、「座間安全・安心推進会」により登録されました。